宮大工に見る人財育成
宮大工の口伝にはこんな言い伝えがあるそうです。
「堂塔建立の用材は木を買わず山を買え」
「木は生育の方位のままに使え」
「堂塔の木組みは木の癖で組め」
いずれも木の使い方の心構えを説いたものです。
要は自然の教えるままに木を使いなさいというもので、
自然に対する心構えとも言えるでしょうね。
例えば
「山の南側の木は細いが強い」
「北側の木は太いけれども柔らかい」
「陰で育った木は弱い」
などなど。生育の場所によって木にも性質があるようです。
昔の建築物(例えば奈良県にある法隆寺など)は
その木の性質を実にうまく利用して建てられているんだそうです。
ところが今の建築方法は考え方が全く逆。
建てたいものにあわせて材料(木)を自由自在に
加工するのが基本。
曲がった木であっても現代の技術であれば
どのような形にも変化させる事ができるんです。
つまり、木の特性なんて全く関係ないんですよね。
これは技術が発達した成果…?
確かにそうなのかもしれませんが、技術の発達によって
木の本来持つ性質(木の個性)は無視されてしまって
いるのが現状なのです。
室町時代に入って槍鉋が姿を消したそうです。
槍鉋に代わってもっと便利な大工道具が出てきます。
今では当たり前の道具となった台鉋もその頃から
出てきたようですし、鋸を使って切るようになったのも
この頃。便利さが追求されるようになったんですね。
(それまでは板の加工でも木の性質を見極めながら
割るのが主流だったようです)。
ある書物で読んだのですが、鋸で適当に切ってしまうと
木の細胞まで破壊してしまう可能性があるそうです。
ところがベテランの宮大工となると細胞と細胞の間を
スカッと切るとの事。そうする事で表面に水も溜まらず、
その結果耐用年数にも大幅な差が出てくるとの事でした。
すごい技術ですよね。
もちろん、新しい道具を使ったほうが効率もいいですし、
見た目もあでやか。
見栄えを重視するのであればそれでもいいのかも
しれませんが、それではせっかくの木の性質を全く
無視する事になります。
つまり、奈良時代や飛鳥時代に建立されたような1000年も
続く建物を造るのは不可能になってしまうんですよね。
もっと言うなら、道具が消えるというのは、それによって
培われた文化が消えるという事です。
大工道具もどんどん便利な物が発明され、それによって
以前使っていた道具が廃れていく。
その事時代は否定しませんが、効率化を追及するあまり
それまで培われていた文化が消えてしまう事にも
なりかねませんよね。
例えば1000年もつ建物を建てるには樹齢1000年の木を
うまく加工して使う必要があるらしいです。
ただし、そのためには先も述べたような1000年持つ
ための先人の知恵や技術が必要なのです。
飛鳥時代はその技術が存在しましたが、道具の発達に
よってそれが廃れてしまった可能性もあるのです。
さて、ここまで宮大工に綿々と受け継がれている木の
加工技術について述べてきましたが、「木」を「人」に
入れ替えることで人財育成でのポイントにも置き換える
ことが可能となるのではないでしょうか?
つまり、1000年もつ会社を経営するためには、それを支える
しっかりとした人が必要だという事です。
そしてその人を育てるには小手先だけの技術研修や英語研修の
導入ではなく、本来その人が持っている個性を十分引き出ような
研修をする必要があるのです。
また、採用も同様です。
その人の成育歴をしっかりと見極め、人財(=財産)としての
原点を持っているのかという観点が必要なのです。
もちろんそれは学歴のことではありません。
その本人がこれまでどのような考え方でそのような活動を
行ってきたのかが個性の原点になるのでしょう。
これまで再三このブログでも紹介しているように、単純に
国内の有名大学を優秀な成績で卒業しただけではいわゆる
純粋培養の成育歴でしかありません。
外的ストレスにも十分耐えられるタフさの原点は、海外などの
現場でもまれていることだと思います。
あえて海外などの日本とは異なる厳しい環境の飛び込むこと、
そしてあるミッションを全うすることなどもこの個性の
原点を形作ると考えられます。
最近大手企業を中心にグローバル人材を海外(特に新興国)での
研修を通じて育てようとしているのも、この人財としての原点を
形作ろうとしている動きなのかもしれません。
人が本来持っている力を信じ、それを見極め引き出す力が
人財採用・育成担当者に求められているのです。
担当者に求められる資質は年々高まっています。
宮大工としての視点を担当者研修に盛り込むのも方法かも
しれませんね。
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